大判例

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東京高等裁判所 昭和56年(ネ)2979号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

被控訴人が本件建物を所有していることは当事者間に争いがないから、控訴人の抗弁について以下考察する。

<証拠>によれば、被控訴人が昭和四三年七月二二日に本件建物を訴外藤精密工業株式会社に対して家賃を一か月四万円と定めて賃貸した旨の建物賃貸借契約証書及び右建物賃貸借に関し敷金一〇万円及び礼金五万円を受領した旨の同会社宛の領収証を作成していること、訴外田中不動産株式会社が右賃貸借契約の仲介人として四万円の仲介手数料を受領した旨の領収証を訴外藤精密工業株式会社宛発行していることを認めることができるから、特段の事情がない限り、訴外藤精密工業株式会社が被控訴人から昭和四三年七月二二日に本件建物を賃借したと認定するのが相当である。もつとも、<証拠>によると、被控訴人を原告とし、控訴人を被告とする東京地方裁判所昭和五三年(ワ)第七三三六号家賃値上等請求事件について被控訴人の請求を一部認容する判決が昭和五六年八月一八日に確定したこと、右認定に係る判決主文が「被控訴人が控訴人に賃貸している本件建物の賃料は、昭和五三年六月一日以降一か月六万円、同年一〇月一日以降一か月八万八三〇〇円であることを確認する。控訴人は被控訴人に対して金二万円に対する昭和五三年六月一日から同年九月三〇日まで、金四万八三〇〇円に対する同年一〇月一日から完済に至るまでそれぞれ年一割による金員を支払え。」となつていて、本件建物を目的とする賃貸借における賃料額を確定し、かつ、未済賃料の支払いを命ずるものであることが認められるが、右確定判決とて、被控訴人及び控訴人間に本件建物につき賃貸借契約が存在することまでを確定するものでないし、かえつて、<証拠>によると、控訴人は、右確定判決に係る被控訴人の控訴人に対する前記家賃値上等請求訴訟においても、本件建物の賃借人は訴外藤精密工業株式会社であつて、控訴人はその賃借人でない旨を主張して、被控訴人の主張する請求原因事実中控訴人が本件建物の賃借人であるとする点を終始否認して争つていることが認められるのであつて、右確定判決の理由中において本件建物についての賃貸借が被控訴人及び控訴人間に成立したとの判断を示しているが(このことは<証拠>によつて認めることができる。)、このような判断といえども、本件判決において貸主被控訴人、借主訴外藤精密工業株式会社間に本件建物の賃貸借が成立したとみる前叙の認定を妨げるべき筋合のものではありえない。

そして、控訴人が本件建物に居住していることは当事者間に争いがないところ、<証拠>によれば、控訴人が訴外藤精密工業株式会社の代表取締役であることを認めることができるから、反対の事情がないかぎり、本件建物における控訴人の右居住関係は、本件建物の賃借人である訴外藤精密工業株式会社の機関たる控訴人による同会社の自己占有を体現するものにほかならないと解するのが相当であつて、控訴人は本件建物に居住することによつて本件建物を占有又は所持するにつき正当な権原を有するものといわなければならない。控訴人の抗弁は理由がある。

(中川幹郎 高橋欣一 菅英昇)

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